AGAとは、「男性ホルモン型脱毛症（Androgenetic Alopecia）」（男性型脱毛症）の略称で、主に成人男性に見られる進行性の脱毛症のことです。

いわゆる「10円ハゲ」のような円形脱毛症では、短期間に特定の箇所の毛髪が一気に抜け落ちるのに対し、AGAは生え際や頭頂部からじわじわと薄くなっていくのが特徴です。

発症する年齢や進行の仕方には個人差がありますが、早い人では10代で発症することもあります。

AGAは、「遺伝」と「男性ホルモン（DHT：ジヒドロテストステロン）」が主な原因とされています。

男性ホルモンの「テストステロン」は、「5αリダクターゼ」という酵素により「DHT」に変換されます。これが毛乳頭細胞（毛髪を作る組織）の受容体と結びつくことで、正常なヘアサイクルを乱し、脱毛症を引き起こします。

「5αリダクターゼ」の活性度や受容体の数は遺伝によって決まるため、母方・父方どちらかに薄毛の人がいる場合には、自分も薄毛になる可能性があります。

また、偏った食生活や過度な飲酒、喫煙、ストレス、睡眠不足などもAGAが進行する原因と考えられています。

「発症したら終わり」と言われるのは、AGAは自力で治すのが難しいことや、治療を長期間継続して行う必要があることが理由と考えられます。

「治療しないほうがいい」と言われることもありますが、AGAは進行性の脱毛症であり、発症すると自然治癒することはなく、症状がどんどん進行してしまいます。しかし、治療を受ければAGAの進行を抑え、症状を改善することが可能です。

実際に、ミノキシジルを使用することで94％の人に発毛効果が得られたというデータもあります。

AGAの進行を食い止めるためには、適切な診断や投薬が必要となるため、気になる症状があれば早めに医師に相談することが重要です。

AGAの治療は、「◯歳から始めた方がいい」といった基準はありません。年齢にかかわらず、少しでも以下のような症状が見られたら受診することをおすすめします。

• 以前よりも髪が細くなってきた
• 抜け毛が多くなってきた
• 生え際や頭頂部が薄くなってきた（M字はげ、つむじハゲなど）
• 頭皮の赤みやかゆみ、ベタつきがある
• 髪の毛のセットがしにくい

AGAは、早い人では10〜20代で発症することもありますが、「まだ若いから」と様子見している間にもどんどん症状が進行してしまいます。

薄毛が目立つ前であれば、抜け毛予防の対策（フィナステリド・デュタステリドの内服）だけで済むことも多いため、早めの受診が肝心です。

多くのクリニックでは、治療が必要な状態かどうかも無料で診断してくれます。「AGAかどうかわからない」という場合でも、気軽に相談してみるといいでしょう。

AGA治療では、使用する薬剤により、以下のような副作用が現れることがあります。

ミノキシジルタブレット（内服薬）	めまい、頭痛、動悸、血圧低下、多毛症など
ミノキシジルローション（外用薬）	かゆみ、発疹、皮膚炎、紅斑など
フィナステリド	肝機能障害、性欲減退、勃起不全などの性機能障害、抑うつ症状など
デュタステリド	肝機能障害、性欲減退、勃起不全などの性機能障害、抑うつ症状、蕁麻疹など

なお、「Oops HAIR」の調査では、副作用が現れた人は全体の1.3％。ほとんどの人が副作用なく治療を続けられている点は安心できるポイントでしょう。

副作用があるかどうかは、個人の体質などによっても異なります。副作用が現れた際には、服薬量の調整や別の治療法への切り替えなども可能なため、必ず医師に相談しましょう。

AGAの治療効果の現れ方には個人差がありますが、早ければ3ヶ月、遅くても6ヶ月〜1年ほどで効果を実感する人が多いとされています。

実際に、フィナステリドの服用を始めて1年後には、約6割の方が軽度改善以上の効果を実感しています（参考：日本皮膚科学会）。

しかし、完全に毛が抜けてしまっている箇所が多いなど、AGAがかなり進行した状態だと、効果が実感できるまでに時間がかかる場合も。実際に、進行初期の人に比べ、進行後期の場合は改善効果が得られにくいというデータもあります。

進行初期に治療を開始すればより高い効果が見込めるため、できるだけ早く受診することが大切です。

また、AGAの発症や進行には生活習慣の影響も大きいと言われています。早く効果を実感するためには、飲酒や喫煙を控え、質の良い睡眠やバランスの良い食事をとることも意識してみましょう。

治療を中断した場合、抜け毛の増加や、DHT（ジヒドロテストステロン）レベルの上昇による頭皮環境の悪化など、AGAの症状が進行する可能性が高いです。

AGAは進行性の病気のため、症状の改善が見られた場合でも、治療をやめればその状態をキープすることはできません。

ある程度治療の効果が見られる状態では、減薬などの調整を行うことも可能なため、自己判断で治療を中止せず、必ず医師に相談してください。

AGAの治療は「自由診療」であり、保険適用はされません。

これは、AGAが健康に大きな影響があるものではなく、美容整形などと同様に「見た目を良くする」ための治療であるからです。

自由診療の場合、治療費は各クリニックで設定できるため、中にはかなり高額になるケースも。AGAは長期間に渡って治療が必要になるので、治療費が安いクリニックを選ぶことが大切です。

また、保険適用外であるだけでなく、医療費控除の対象外である点にも注意しましょう。